マガキの成熟と産卵

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マガキの成熟と水温

マガキ(成体)は水温の変動に応じて成熟と栄養分の蓄積を交互に繰り返します。冬から春にかけて水温が上昇し始めると主に蓄えていた栄養分をもとに生殖巣に卵・精子(配偶子)を蓄積していきます。梅雨時期から秋にかけて蓄えた卵・精子を放出します。この放出は水温が下がり始めるまでの間繰り返されます。夏から秋にかけて水温が低下し始めると,生殖巣の発達に使っていた栄養分を次の年の産卵の準備の為に蓄積するようになります。水温の上昇下降を感知してスイッチが切り替わるようです。

水温上昇期

広島湾の場合,最低水温は2月くらいで3月に入ると上昇し始めます。養殖中のマガキは水温の低いこの時期に生殖巣以外で最大の栄養を蓄積しています。水温が上昇し始めると軟体部の少し深いところ(表面から見えません)に生殖巣の組織が出現し,卵や精子を蓄積しはじめます。この時期に精子を蓄えるか卵をを蓄えるかで雌雄が分かれ雌雄別個体になります。雌雄の比率はほぼ半々ですが,この時期の栄養状態が良いと雌の割合が高くなると言われています。

産卵期

その年の最初の産卵は梅雨時期に起こることが多いようです。この時期,すでに生殖巣は卵あるいは精子で充満していますので,軟体部の表面に枝状に伸びる管もはっきりと見えます。水温や塩分などの変動刺激があれば放出が始まります。降雨による急激な塩分の変化や大潮期の海水の大きな動きが刺激になることが多いようです。群れの中の1個体が放出を始めると放出された卵や精子が刺激になり周囲の個体も一斉に放出を始めます。海水が白く濁ってしまうほどです(下の写真は養殖中の牡蠣と岸壁の牡蠣が一斉産卵ししている様子です。)。放出された卵と精子は海水中で受精します。受精卵の発生や浮遊幼生については別の項目で解説しましょう。

養殖マガキの産卵

岸壁天然マガキの産卵

上の動画は2019年7月5日に中町港(広島県江田島市)の岸壁で撮影しました。

夏の時期の牡蠣は一度の放出で終わりません。蓄積した栄養分の残りや新たに食べた餌の余剰の栄養分があれば全て卵・精子の形成に向けられます。蓄積された卵・精子は再び刺激があれば放出されます。

ほとんどの栄養分を使い果たすと中身は透明になっていきます。この栄養分の抜けた状態は「水がき」と言われています。夏の時期の牡蠣は卵や精子を多く含んでいるか,水がきのいずれかの状態ですのでとても食べて美味しい状態ではありません。

身入り期

秋になってようやく海水温が低下し始めると,牡蠣は卵・精子の形成に向けていたエネルギーを栄養分の蓄積に方向転換します。放出されずに生殖巣に残っている卵・精子も分解して再吸収されていきます。

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